Wednesday, June 25, 2008

DSH試験直前

とある美術大学の入学試験から、大学での授業についてゆけるだけのドイツ 語の能力を証明するDSH試験(Deutsche Sprachpruefung fuer den Hochschulzugang auslaendischer Studienbewerber)まで約1ヶ月半。
その間、何をしていたかっていうと…。
旅行行ったりしてましたー。しかも2回も。そのうえ国外旅行(フランスとイタリア…)。
エヘ。

ドイツ留学希望者なら誰でも知ってる、恐怖のDSH試験。
「そんなの余裕よー」なんて思っていたわけではもちろんなく、何ヶ月も前から日本の友人がフランスにやってくることが分かっていて、彼女にはこの機会を逃したら、今度いつ会えるか分からない。
そして、もう1つの旅行も美大入試も済んでいないときに、たまたま友人から「イタリア旅行の席が余ってるけど、どう?費用もかなり安いし」と言われて、「まあ、息抜きも大切だし…」と軽く受けてしまっていた。
これらの旅行の予定を立てたときには、まだまだDSHまで時間があったので、ここまで精神的に切迫した状況になるなんて思っても見なかった。

勉強の息抜きどころか、旅行の息抜きにいっちょ、勉強するかー!みたいな…。
…世間をなめすぎだって…。

7月のはじめに美大の合格通知をもらい、とりあえず実技試験には合格したぞ、自分にゴクロウサンと浮かれて、その上、旅行だ旅行だとばたばたして、結局7月は大して勉強もせずに通り過ぎてしまった。
やっと本腰を入れてDSHに対する勉強をし始めたのが、8月。
9月の末にはついに試験。
毎日語学学校に通いつつ、それこそ、毎日血反吐吐くほどのドイツ語勉強の日々となった。

私の通っていた語学学校は、ドイツの大学入学希望者がとても多く、8月9月と受講したクラスの受講者半分以上が1ヶ月、2ヵ月後のDSHに向けて勉強していた。
そんなみんなの中だからこそ、自分の実力も分かるというもの。
先生も口には出さなかったけど、「…コイツは多分、ダメだろう…」と思われていたこと、間違いナシな劣等生だった。(DSH入試のあとで先生に訊いてみたら、やっぱりそう思っていたらしい)
ドイツ語の発音は悪い、聞き取りができない、長文読解はいつもとんちんかんな答えを返す、と3拍子揃っていることは自分でも分かっていたけど、ここであきらめるわけにもいかず…。

キレる直前ぐらいのストレスの中、9月にはさらにとんでもない事態になった。

DSH試験前の最後のクラスの先生として、私が学校内で一番苦手なD先生が担任になってしまったのである。
D先生は60歳くらいの、ちょっとダンディなデッカイ雄牛みたいな先生で、いつも葉巻と紙タバコの中間のような細くて茶色いタバコを吸っている人だった。
いつも「姑が行方不明になった日に、嫁さんがよく分からない動物の肉で豪華な焼肉作り、近所に振舞った」とかブラックなギャグをとばしていて、ドイツ語の発音にとにかくウルサイ。

めちゃめちゃ日本語なまりのドイツ語発音をする私は、D先生のツボにはまってしまい、15人以上も他の生徒がいるにも関わらず、私の発音の矯正のためだけに5分10分授業が中断することがほぼ毎日の状況に陥ってしまったのだ。
それに、ちょっとでも分からないことを質問したり、反論したりすると、逆にぐうの音も出ないほどやり込められるので、会話をするのにもものすごく気合が必要。
けしてD先生が悪い人だとは思わないけれど、DSHが目前に迫ってくる中で、文法、長文読解なんかに力に入れたい私には、苦痛なことこの上なく、しかもどういうわけか、他のみんなが1回当てられる間に、私だけ3回当てられる状態だった。
多分、気にかけてもらっていたからこそ、あれだけうるさく発音に注意されたし、何回も当てられたんだろうけど、途中で耐えられなくなって、「頼むから、いちいち私に振ってこないで~~~」と半泣きでお願いし、やっとちょっとは落ち着いて勉強することができるようになった。

そして、せっせと鈍い脳みその許容量限界まで即席ドイツ語知識を詰め込み、いろいろあったけど、親切にしてもらったD先生に「がんばれよ~」と励まされ、試験のある大学町まで出かけていったのは試験前日の9月も末。
緊張と興奮でふらふらになりつつ、その日はその町のホテルに泊まった。


10.01.2003記(06.25.2008改)

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