Monday, July 14, 2008

南仏


1ヶ月以上も日記をサボって、一体何をしていたかと言いますと…。
旅行してました。
いや、さすがに1ヶ月も旅行に行ってはいないですが。

というわけで、J君の学会のお供で南仏に行ってました。
とはいっても、ほとんどスペインに近いところです。

去年、ドイツからオランダに越してきて、その微妙な国民性の違いにイライラしたり、びっくりしたりしていたのですが、おフランスは更に違いますね!
旅先で気がついた点は、と言いますと…。

① かの国では、子どもに優しいっすね!
行きの電車で200人くらいの子ども夏休み旅行グループにぶち当たり、J君と2人であまりの無法地帯っぷりに切れそうに…。
もちろん、家庭によって教育方針が違うのは普通のことなのですが、ハイに叫んでる子ども+何もしない親にオランダやドイツよりも頻繁に遭遇しました。
これって、フランスというよりも、南仏だったからなんでしょうか???(南ヨーロッパでは、子どもを大事にしてあまり叱らないって聞くので)

② 老若男女問わず、アロマティックな人が多い。
文化や習慣の違いなんでしょうか…?ドイツやオランダでは「この人はヤバイ」というのは分かるものなのですが、あっちでは普通に見える若いおにいちゃん、おねえちゃんもすごい臭気を放ってたり…。
J君いわく、「フランスでは体臭ってフェチな要素って話だから、デオ、使わないんじゃ…?」とか。

③ 積極的な物乞いさんがいっぱい。
自販機やキャッシュディスペンサーの前に陣取り、しつこく話しかけてくる、物乞いさんがいっぱいでした。
ジプシーがたくさんいるから?

④ もちろん!、食べ物がおいしい。
ドイツよりは高いけど、オランダよりはちょっと安いかも…。レストランで食べるなら。
でも、大味なドイツやオランダの味付けと比べると、香辛料が上品に利いてて、おいしいぃーーー。
さすがスペインに近かっただけあって、たくさんのレストランがクスクスを売りにしていました。

⑤ 溶けるほど暑い…。
気温も20度前後で湿度も高くないオランダから、あんまり日本と変わらない南仏の気候は、引き篭もり気味オタクの私には堪えました…。
こういうときには、ジェラートで乗りきってました。
そういえば、アムスでジェラート屋さんをみかけないのですが…。ドイツではどこにでもあったのにーーー。

⑥ ドイツ人はどこに行ってもビールを頼む。
つうか、ワインどころですよね!?南仏。
J君は案の定、毎日ビール飲んでました。ビールもワインも1杯の値段がほとんど変わらないのに!
最終日には嫁(私に)「ワイン飲め!」と言われたので、ワイン注文してましたが…。(でも肉の煮込み料理に白ワインを注文して、店員さんに「白ですか??」と訊き返されてました)

⑦ そして、J君はゲームボーイの超魔界村のワンステージをクリア。
帰りの満員電車内でなかなかクリアできなかったステージをやっと乗り越え、人目も考えずにガッツポーズ。
隣のオランダ人に変な顔をされてました…。

小さいことはまだまだいろいろあったのですが、まあこんな感じの旅行でした。
…でも、休暇旅行に行って(J君は仕事だけど)疲れて帰ってきたと感じるのは、年を取ったということでしょうか…?

Thursday, July 03, 2008

本課程における企業研修

大学入学前か中間試験前までに企業研修を義務付けている大学がほとんどだ、ということは以前書いたと思います。
この際の研修は、工房での作業を中心とした職人的な技術を身につける意味のものですが、本課程において求められる研修はデザイナーとしてのスキルを上げるような研修です。

ドイツではデザイン業界での研修制度は普通のことですし、多くのデザイン事務所、または企業が研修生を募集しています。
研修生の募集はインターネットや大学の研究室を通じて行われているので、よっぽど運が悪いか、「絶対この企業で!」という思い入れのない限り、受け入れ先は簡単に見つかるでしょう。
実際、私も研究室のホワイトボードに張り出されていた研修生募集に申し込み、受け入れてもらうことができました。
研修生として求められる知識(だいたいデザインで使うグラフィックや3Dソフトのスキル)は募集の際に書かれているので、自分の条件にあったところをみつけられます。

研修生の仕事内容はもちろん、受け入れ先によります。
私は研修先にて、社員さんとほぼ同じ内容の仕事をしていましたが、人によってはファイル整理、掃除などデザイン的な仕事はほとんど回ってこなかった、ということもあります。
ドイツでは新人社員の社内教育というのものはほとんどない、といっても過言ではないでしょう。
1度正社員として就職すれば、すぐに即戦力として働くことを期待されます。
しかし、ファイルの整理などのデザインとは直接関係のない雑用でも誰かが行わなければなりませんし、慢性的に人手の足りない職場では、新しい人を雇って発生するリスクを避けたい、あるいは新社員のための費用のないところもあるでしょう。
一方で学生は多少の知識はあるけれど、スキルがない、などの問題を抱えています。

ですので、ドイツにかかわらず、ヨーロッパのデザイン業界における積極的な研修生受け入れは、両者の利害関係が一致した形と言えるでしょう。
学生はデザイン事務所で実際の業務を学べ、企業は多少のリスクは抱えるものの安い働き手が手に入ります。(ひどい言い方をしてしまうと、企業の望む働きをしない研修生が来る場合でも、すぐ解雇できる、または期間が過ぎればいなくなる、ということですね。学生側から「得るものがない」と研修打ち切りにする場合もあります)
この研修先でお互いにいい関係を築くことができた人は、研修期間終了後に引き続きアルバイトとして雇ってもらえる場合もありますし、研修が修了し、大学卒業後、その事務所で就職した、という人もいます。

そうでなくても卒業後の就職活動の際、「ここでこれだけ研修をしました。その経験があるのですぐに働けます」(研修後は研修先から証明書が出ます)と提示することができるので、学生の中には複数の研修をする人もいます。

私も研修中は大変だと思うことも多かったですが、企業におけるデザインワークの流れがとてもよく勉強できたと思います。

ただ、「ドイツで学生をやっているわけではないが、ドイツのデザイン事務所で研修をしたい!」というのは難しい、と思います。
というのも、労働許可の問題です。
私はドイツでの滞在許可、そして条件付の労働許可を持っていましたが、その労働許可の条件が研修生とは言え実際の労働状況には合わないだろう、言われたことがあります。つまり、私を受け入れることによって、企業の方で法律違反を犯す可能性があり、それを回避するためには企業の方から労働局に働きかける必要があったらしいのです。
それには時間もお金もかかるので、EU出身で私と同じくらいの能力がある人がいるなら、そっちを取るとはっきり言われました。

その上、デザイン研修だけの給料では家賃の安いドイツとはいえ、とてもじゃないのですが暮らしていけません(無給のところも多いです)し、実際には社員さんと同じ仕事(拘束時間は1日12時間くらいです)をしている場合、平行してバイトをすることはかなりの覚悟と時間が必要です。

なんてえらそうなことを書きましたが、私もまだ就職活動中の身です。
早く、大学で学んだことや研修中に吸収できたことを下に就職できればいいんですけどね…。

Diplom(ディプロム=卒業試験)

本課程で卒業に必要な単位がすべて取れたら、卒業試験に申し込むことができます。
これは日本でも同じですね。
しかし前にもどこかで書きましたが、私の日本の大学とは違い、いくら単位が揃っていようが、自分で試験の申し込みをしない限り卒業試験を強制されることはありません。論理的には、5年で卒業単位がすべて取れても、その後10年以上、大学に在籍することも可能です。
まあ、こんなことをする人は最近の授業料云々の問題もある上、メリットも少ないのであまりいないでしょうが…。

卒業試験は卒論の提出、卒制のモデルとそのドキュメント、そして、論文と制作に対しての口答試験が別々にあり、最終的に内部、外部から人を集めてのプレゼンがありました。(あくまでうちの大学の場合です。多くの大学では卒業試験のプレゼンが外部公開されていないようです)

私のドイツの大学では、年に2回卒業試験の申し込みがありました。友人の話を聞いても年2回というのがスタンダードなようです。
その申し込みの際、単位を取得したゼミなり講義なりのリストとその授業を担当した教授のサイン、そして卒業制作の申し込み用紙を指導教授のサインとともに提出します。(うちの場合は学科の秘書さんが申し込みを受け付けていました)
そこで、渡したリストにある単位が本当に取得できているかが照合され、そこでOKがでれば卒業試験の申し込みが完了します。(注1*)
うちの大学の場合、指導教授が2人必要でした(そのうちの1人は外部のデザイナー、その分野で十分な知識を要している人でもOK)が、これも大学によっては指導教授は一人だけ、というところも少なくないようです。

卒業制作の期間については、大学によってバラつきがあります。
私の大学では毎年2月申し込みの卒制は11月の頭に修了し、7月に申し込みのものは4月頭に修了しています。
が、友人の話を聞くと、学期初め(4月か10月)に申し込み、学期末に修了するという人もいましたし、学期始めに申し込み、次の学期の中盤ごろに卒制発表という大学もあります。申し込みから卒制の発表まで3ヶ月くらいという人もいました。
私の大学のように中途半端な時期に始まって、終わる上、足掛け3学期(9ヶ月)も続く卒制はドイツの美大の中でもさすがに特殊なようでした。

私個人の意見としては、期間が長いからといって充実した制作になったかというと…。
自分のやりたいことがはっきりしていて、教授もそれを了承している場合には時間も十分にある中、一気に制作を進められるのでしょうが、私の場合、割と抽象的なテーマを選択した上に、2人の指導教授の意見が分かれることがかなりあり、中盤から最後までアイデアを練っては捨て、また練り直し…の繰り返しとなりました。
私の周りも、「逆に時間がありすぎる分、『もっと良いものができるのではないか?』と常に不安になっていろんな方向性、デザインに手を出した考えた結果、最終的には制作時間が足りなくなりそうになった」という人も多く、卒制でもっとも重要なのはタイムプランだ、と痛感しました。

もし論文、制作とも提出期限に間に合わなくなったら試験延長も可能ですが、ドイツの教育システムでは基本的に2回連続で不合格や延長をすることは認められないので、もし2回目に間に合わなくなった場合には退学させられることになるので注意が必要です。

(注1*)
うちの大学では、卒業試験申し込み後に取得(予定)単位のレポート提出も認められていました。人によっては申し込み後、3つのレポート提出をした人もいます。その人いわく、本当は2年前に提出しているべきレポートだったみたいです
ただ、こういうことはうちの大学のように規模が小さく、学生と学科の秘書さん、大学教授がみんな友達のような感覚で機能しているようなところだからこそ、可能であったことだと思います。(要するにいい加減だった)
管理の厳しい大学では絶対認められないはずなので、注意してください。

Tuesday, July 01, 2008

大学のシステム変化と授業料

ここ数年、ドイツの大学のシステムに変化がありました。
1つは日本で主流の学士制度が導入されたことだと思います。(ただし、私はこのことに関して、専門的な知識を持っているわけではないので、ここに書くのは大体の話になってしまいますが、ご了承ください)

ドイツと日本の就学システムの違いはまず、ドイツの高校に相当するギムナジウムが19歳で終了することと言えるでしょう。
そのため、日本の高校を卒業してすぐに渡独しても、大学入学が認められないのはご存知の方も多いと思います。(大学入学には日本の大学の入試に合格したことを証明する書類が必要です)

そして、18歳を成人とするドイツでは、男子に兵役の義務が課せられます。
この兵役は拒否することも可能で、その代わりに民間奉仕作業を行うことになり、兵役、民間奉仕作業ともに1年ほど従事しなければなりません。

そのため、ドイツではかなりの学生が、大学入学の時点で20歳を超えているのです。

そしてつい最近まで、ドイツの大学の卒業資格はDiplom(ディプロム)またはMagister(マギスター)と呼ばれる日本の大学での修士に相当するものでした。
(注1*)
ドイツの大学では、「何年で卒業すること」という明確な決まりがないのですが(日本なら、「4年で卒業」というのが普通ですよね)、このDiplomやMagisterを取得するまでに5年から6年かかるのが一般的です。
少し前までは、8年以上大学に在籍する学生もすくなくなかったようです。

が、ここ数年、日本やアメリカで一般的な学士制度を導入する大学が増えているそうです。
しかし、高校までの教育システムの違いから、この学士も3年、または3年半で卒業となる、という話を聞いたことがあります。
私の通っていた美術大学では、学士制度は導入せず、Diplom制度をそのまま残した形となりましたが、そのシステムは徐々に変化してきています。
私は古いシステムのまま卒業しましたが、新しいシステムでは、Vordiplom(中間試験)やDiplom(卒業試験)が夏休みや冬休みに行われるのではなく、1課題として学期中に行われることになった、という話を聞きました。

このことは大学入学から卒業までにかかる年数を明確にすることと共に、その年数の短縮を目指すものだと思います。


2つ目の変化は授業料の導入でしょう。

ドイツは今でも学生にとって恵まれた国であると思いますし、実際に私もその恩恵に受け、大学で勉強していましたが、ハンブルグ(独立都市)やバイエルン州などでは、1年ほど前から1学期につき500ユーロ程度(日本円に換算すると80000円くらい)の授業料の支払いが義務付けられました。
他の州でも、大学側が指定する入学から卒業までに要する期間(9学期=4年半)+4学期以上在籍する学生にはこの授業料の支払いを義務付けているところがほとんどです。
州によっては、留学生は授業料の支払いを免除されるところもあるそうですが、私の大学のある州では日本人にはドイツの学生と同じように授業料の支払い義務がありました。

しかし、私は、ちょうど卒業すると同時に第1学期から授業料徴収が導入されたので、授業料の支払いを免れましたが、これから留学を目指している人はこのことを念頭においた上で計画をたてることが必要でしょう。


(注1*)
私が修了したのはDiplom課程です。DiplomとMagisterの違いについては、あまり詳しくないのでここに書くことは遠慮させてもらいます。
そして、Fachhochshule(ファーハホーホシューレ=専門単科大学)を卒業した場合には、卒業した際にFachdiplomという課程を修了したことになります。Fachhochschuleは他の大学よりも卒業年数が1年か1年半ほど短いことが一般的です。
これは大学とFachhochschuleの学生育成における目的と、それに伴って組み立てられたカリキュラムの違いからくるものでしょう。