Wednesday, June 25, 2008

面接

実技試験の次の日、私はまた学校へ向かった。
面接は苗字のアルファベット順で行われ、「YAMAMOTO」な私は当然のように一番最後。
試験の招待状に「あなたの面接試験は、11時に始まります。それまでに来てください」と書いてあったので、確か10時半くらいには大学に到着していたと思う。

大学には、自分の出番を待っている受験生が10人くらいすでにいて、なんだか嫌な予感がした…。

面接試験は、教授3~4人と受験生3人の対話式で行われたんだけど、どうも前の方の面接がどんどん長引いてきているよう。
「最初の面接組が5分延長してしゃべる」→「次の組も5分延長」→「…これが延々と続く…」という構図で、結局、面接の順番がたまたま最後の方だった人たちは、 2時間以上も大学で待たされることとなった。

みんなそれなりに緊張していたけど、気分転換にお茶でもしたくっても、いつ自分の面接がはじまるか、分かったものじゃないからずっとここにいなくちゃいけない。
どことなくイライラしながら、それぞれ2時間どうにか耐えていた。

そんな時、小心者な私はどうだったか?っていうと…。
今にも緊張で脳みその血管が切れそうだった。

前にも書いたように、不合格を80%確信していたわけだけど、まだあきらめていたわけではなかったので
他の受験生たちは、「なんでこんなに遅れるんだ」とか文句を言い合って、それでもなんだか楽しそうに談話していたけど、彼らの話に入っていけるほどの語学力は私にはなかった(そして、今もかなりツライ)。
みんなが何かを話している間、私は一人アヤしく寂しく、面接の練習をしていた。
「私はヤマモトといいます。日本から来ました。」「なんでドイツで勉強したいと思ったかというと…」とかなんとか。

結局、私の面接が始まったのは、午後の1時すぎ。
この時点で、もう緊張もなにもなくなっていて、ヘロヘロになっていたような…。
とにかく、早く終わってくれー(涙)という気分だった。

面接部屋には、教授と講師、それから助手の全部で7~8人はいたと思う。
最初に向こう側から自己紹介されたけど、これがねー。名前が聞き取れなくって…。
ここは、得意の知ったかぶり、というか、聞こえたフリをした。

そして、今度は受験生の番。
自己紹介と実技試験での自分の作品紹介。そして、願書提出時に同時提出したファイルの中から、一番自信のある作品を選んで紹介しろ、と言われた。
で、どういうわけか、私がトップバッターだった。

気分は実技入試直後と同じ、「今日は教授たちと楽しいオハナシをするのー。うふふふふふふ…」というラリった状態。
緊張しすぎで、正常思考回路に異常をきたしていたらしいので。
なんとなく、自分の作品を説明して、私の入試のすべてが終わった…。

いや、本当は「自分の番が終わった」だけだったんだけど、自分の作品紹介を終了した時点で、もうまだ他の受験生2人の面接が終わっていないことなんて、きれいさっぱり忘れていた。

私の次に自己紹介をはじめたのは、右隣に座っていた男の子。
彼が説明しはじめた時に、かなりショックを受けた。
なにがスゴかったって、作品のファイル。
私のように「何に使えるか分からないけど、いろいろオブジェを作ってみましたー。みてみてー」とかいうんじゃなくって、「僕はハンドドリルを設計してみました。 こういう機能がついています」とかいう、かなり具体的で、かつ丁寧なスケッチが何枚もあった。
教授たちも、私の面接のときとは違って、彼のスケッチを身を乗り出して、見ていたし。

なんだか隣に座っていて、悲しくなってきたことを覚えている。
「高校卒業したてのにいちゃんが、こんだけできて、なんで私は…」って感じに。

彼の後に、最後の女の子の面接。
彼女のファイルは、どっちかっていうと、私のと同じタイプ。
いろいろ説明していたけど、若いドイツ人は大抵、早口でしゃべるので、何を言っているのかさっぱり分からなかった…。

面接の最後に教授がこう言った。
「こたつさんは問題ないんだけど、他の2人。
うちの学校は、大学(Hochshule)であって、専門大学(Fachhochschule)じゃないから、ひょっとしたら、あなたたちは試験に合格できないかもしれないですね。
うちの学校には、大学入学資格がいります。
あなたたちは、専門大学入学資格しか持ってないので。
100%不可能ってわけではないけど、そういう可能性がありうるということは知っておいてくださいね」

他の2人は、この瞬間にかなり青ざめていたよ、かわいそうに…。
でも、入学資格っていうのは、大学に願書を出す時点か、それ以前に調べておくものじゃないのか?

いつも思うんだけど、ドイツ人てこのへんにかなりいいかげんなような…。もちろん、全員じゃないんだけど。


05.10.2002 記(06.25.2008改)

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