Wednesday, June 25, 2008

入学試験

願書と共にファイルを提出してから、約1週間後、早速、美大から入試の期日や方法などを記載した手紙がやってきた。

「入試は、多分、あと1ヶ月後」と勝手に思いこんでいた私は、その手紙をもらってから2週間後に入試、という事実にかなり驚いて、焦った。
どうしよう、と思ったけど、今更なのでとりあえず、必要なものを揃えるなどの準備をしつつ、ドイツ語の勉強。
そして、なんだかあっという間に入試の日がやってきた。
前日は、「試験に落ちたら、その後何をしたらいいんだろう…?」とか考えていて、眠れなかったような…。
自分でいうのもなんだけど、気の小さいヤツだ…。

うちの大学の入試は、2日にわたって行われ、1日目は実技、2日目は面接。
入試の招待状には、「A2のスケッチブックにいろいろな硬さの鉛筆、色鉛筆、水性絵の具に筆、マジックなどなど…」とか書いてあって、一応、書いてあるものは全部、持っていった。

うちの科の定員は25人くらいで、志願者はこの時、50人くらい。
試験官に「好きなところに座って」と言われて、みんな適当に席を取っていた。
入試への招待状(変な表現だけど、他に思いつかないので…)には、1時間づつ3種類の試験がある、と書いてあった。
私は日本でも美大に通っていたので、日本の美大の入試も受けたことがあるんだけど、どこの学校も1種類の試験(例えば、デッサンなり平面構成なり) に対して、最低でも3時間は時間をとっていたような…。
「試験時間が短いのに、マジックだの絵の具だのが必要??」とか思ったりもした。

試験会場には、Mappenberatungと呼ばれる、要するに「こんなファイルでどんなもんでしょうかー?」と大学入学希望者がファイルを教授に見せて助言をもらえるという、結構ありがたい集まりで見た面々もいた。
ざっと見たところ、私以外にアジア人受験者はいなかった。
受験者名簿の中には、中国人と思われる人の名前もあったけど、結局この人達は会場には現れなかった。
ちょっとドキドキしながら試験開始を待っていると、若いけどチョビヒゲのおじさんが椅子をひとつ担いで現れた。
最初の試験は、「この椅子をデッサンしろ」というもの。

おお、こんな試験は日本の美大入試と一緒だ、とか思って描きはじめたら、私の前の席に座っていたおにーちゃんが話しかけてきた。
「あのさー、スケッチブックのサイズ、間違って持ってきちゃたんだよね。何枚か分けてくれない?」って。

…あんた、あんなにでっかくサイズ指定書いてあったやん…。ちゃんと読んで来やんだやろ…。

まあ、随分余分に持っていったから、分けてあげたけど。
でも、書き始めて5分くらいたってから、私の絵を他の人達の絵がかなり違うことに気がついた。
何が違うって、絵のサイズが違う。
私みたいに、A2の紙一面にでかい椅子を1個だけ、なんて描いている人は1人もいない…。
みんな、A2の紙の上に、小さく椅子を細かく描いていた。人によっては、同じ椅子を複数、多い人は5個とか6個とか、時間内に描けるだけ描いていた。

だって私は、大学受験の時に、「デッサンは、出来るだけ大きく描け!」って言われたから…。
と言い訳しても、ここはドイツで、日本じゃない。
郷にいりては郷に従え、だけど、日本での美大受験の際に叩き込まれた「デッサン術」みたいなものが体に染み付いている上、試験時間は1時間。
「え?どうしたらいいんだー!?」とか考えているうちに、試験終了…。
後に試験はまだ2個あるのに、すでにどっと疲れてしまった…。

15分くらいの休憩をはさんで、次の試験。
またあのチョビヒゲのおじさんがやってきて、試験を読み上げた。

が、私には何を言っているのか、理解できなかった…。
目の前が真っ暗になったけど、ここで「わかりませんでした」と1時間座っているわけにもいかないので、おじさんのところまで行き、「試験の問題が聞き取れなかったので、もう1度言ってください」とお願いする。
見るからにアジア人な私に、おじさんは親切に説明してくれた…。おじさん、ありがとう…。

後の2つの試験は、デッサンとかじゃなくて、本当に「デザイン」に関係するものだった。
「ペットボトルの水を輸送するための容器を考えろ」やら、「海岸で貴重品を保管するための器具を考えろ」やら。
試験が終わった頃には、「ダメだ、こりゃ」と不合格を80%確信してしまっていた。
自分の発想力のなさを思い知った感があった…。

次の日は教授たちとの面接だった。
 実技試験でかなりこけたことで逆に開き直って、「明日は、大学の先生たちと楽しいお話の日。ウフフフ…」と酔っ払ったような気分でうちまでヨロヨロと戻った。

この後、家で「さて、あと1年、どうしようか…。来年、もう1度受験しようか?それとも、聴講生を1年くらいしようか?」とかなり真剣に考えた記憶がある。
でも、「ダメだ、こりゃ。次、いってみよう」と開き直ったためと、昨日あまり眠れなかったことから、この日はすぐに深い眠りについた。


04.06.2002記(06.25.2008改)

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