Thursday, July 03, 2008

本課程における企業研修

大学入学前か中間試験前までに企業研修を義務付けている大学がほとんどだ、ということは以前書いたと思います。
この際の研修は、工房での作業を中心とした職人的な技術を身につける意味のものですが、本課程において求められる研修はデザイナーとしてのスキルを上げるような研修です。

ドイツではデザイン業界での研修制度は普通のことですし、多くのデザイン事務所、または企業が研修生を募集しています。
研修生の募集はインターネットや大学の研究室を通じて行われているので、よっぽど運が悪いか、「絶対この企業で!」という思い入れのない限り、受け入れ先は簡単に見つかるでしょう。
実際、私も研究室のホワイトボードに張り出されていた研修生募集に申し込み、受け入れてもらうことができました。
研修生として求められる知識(だいたいデザインで使うグラフィックや3Dソフトのスキル)は募集の際に書かれているので、自分の条件にあったところをみつけられます。

研修生の仕事内容はもちろん、受け入れ先によります。
私は研修先にて、社員さんとほぼ同じ内容の仕事をしていましたが、人によってはファイル整理、掃除などデザイン的な仕事はほとんど回ってこなかった、ということもあります。
ドイツでは新人社員の社内教育というのものはほとんどない、といっても過言ではないでしょう。
1度正社員として就職すれば、すぐに即戦力として働くことを期待されます。
しかし、ファイルの整理などのデザインとは直接関係のない雑用でも誰かが行わなければなりませんし、慢性的に人手の足りない職場では、新しい人を雇って発生するリスクを避けたい、あるいは新社員のための費用のないところもあるでしょう。
一方で学生は多少の知識はあるけれど、スキルがない、などの問題を抱えています。

ですので、ドイツにかかわらず、ヨーロッパのデザイン業界における積極的な研修生受け入れは、両者の利害関係が一致した形と言えるでしょう。
学生はデザイン事務所で実際の業務を学べ、企業は多少のリスクは抱えるものの安い働き手が手に入ります。(ひどい言い方をしてしまうと、企業の望む働きをしない研修生が来る場合でも、すぐ解雇できる、または期間が過ぎればいなくなる、ということですね。学生側から「得るものがない」と研修打ち切りにする場合もあります)
この研修先でお互いにいい関係を築くことができた人は、研修期間終了後に引き続きアルバイトとして雇ってもらえる場合もありますし、研修が修了し、大学卒業後、その事務所で就職した、という人もいます。

そうでなくても卒業後の就職活動の際、「ここでこれだけ研修をしました。その経験があるのですぐに働けます」(研修後は研修先から証明書が出ます)と提示することができるので、学生の中には複数の研修をする人もいます。

私も研修中は大変だと思うことも多かったですが、企業におけるデザインワークの流れがとてもよく勉強できたと思います。

ただ、「ドイツで学生をやっているわけではないが、ドイツのデザイン事務所で研修をしたい!」というのは難しい、と思います。
というのも、労働許可の問題です。
私はドイツでの滞在許可、そして条件付の労働許可を持っていましたが、その労働許可の条件が研修生とは言え実際の労働状況には合わないだろう、言われたことがあります。つまり、私を受け入れることによって、企業の方で法律違反を犯す可能性があり、それを回避するためには企業の方から労働局に働きかける必要があったらしいのです。
それには時間もお金もかかるので、EU出身で私と同じくらいの能力がある人がいるなら、そっちを取るとはっきり言われました。

その上、デザイン研修だけの給料では家賃の安いドイツとはいえ、とてもじゃないのですが暮らしていけません(無給のところも多いです)し、実際には社員さんと同じ仕事(拘束時間は1日12時間くらいです)をしている場合、平行してバイトをすることはかなりの覚悟と時間が必要です。

なんてえらそうなことを書きましたが、私もまだ就職活動中の身です。
早く、大学で学んだことや研修中に吸収できたことを下に就職できればいいんですけどね…。

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